数日後

あの番組は無事放送され、そして数日が経った。僕は普段から自分が出演した番組は全てチェックし、言葉遣いや態度に改める所は無いかを確認する。今回は予想外の出来事が発生してしまったのでもう少しアドリブ力を上げていくことが課題だ。スマホが鳴る。マネージャーからだ。明日のドラマ撮影のことかもしれない。 「もしもし、お疲れ様です」 「あ、もしもししょうくん?夜遅くにごめんね。…丸田さん司会の番組って見た?」 「はい、時間あったのでリアルタイムで見ました」 「あのさ…あの番組、実は…」  どうしたんだろう、もしかして炎上したとか?ひやひやしながらそう思っていると、マネージャーはこんなことを言い出した。

「あれからSNSの方でしょうくんとねこねこ村についてずっと盛り上がってて」 「え?」  僕はSNSを見ない。事務所の方針の為一応アカウントは持っているものの、基本的にお知らせしか投稿しないようにしている。マネージャーや芸能仲間達からは「もっと更新しなさい」とよく言われているのだが、こういう表に立つ仕事をしている限り何がきっかけで炎上するか分からないので僕はこのスタイルでやらせてもらっている。流行に疎くても炎上しないならそれで良いのだ。 「ほら、しょうくんがリュックにつけていたあの猫のマスコット。番組内では謎のまま終わったけど、あのテレビを見たしょうくんのファンがねこねこ村について知っていたみたいで。」 「え?…えーと…それで」 「結論から言うと、ねこねこ村からオファーが来ました。」 「は?」

その後、マネージャーから聞いたことは次のようになる。僕が先生から貰ったねこねこちゃんのマスコットキーホルダー(ファンの呟きによると、このキャラクターの名前は『ねこねこちゃん』というらしい。)をうっかり付けたまま収録をしたあの番組は、そもそも放送中から「何だあれ」「ねこねこ村ってどこだよ」「あのマスコット欲しい」などと話題になっていたらしい。そんな中、ねこねこ村を知っているという人物がねこねこ村ってこういうところだよというのをSNSで発信。すると僕のファンを中心にどんどん拡散されていき、しまいにはねこねこ村の村長さんの耳に入ってしまった。村からしたらこんなチャンスはもう二度と無いと感じたらしく、村の盛り上げの依頼をこの度僕にお願いしたという流れだ。話題になってから数日しか経っていないが今はゴールデンウィークの真っ只中。ねこねこ村は今、こんな誰も知らないような村に行く人なんていないだろうと思っている人たちでごった返しているようだ。グッズの生産も間に合っておらず、大混乱はしているものの大盛り上がりしてるらしい。 急な仕事で申し訳ないんだけど来月ねこねこ村の方に行って、アピール活動をして欲しい、スケジュールはこちらで調整するから、とマネージャーは言った。まあ、僕も断る理由が無いので快く引き受けたが、まさか先生が持って帰ったねこねこ村のマスコットキーホルダーが世間にここまでの影響をもたらすとは一体誰が想像しただろう。 この流行の発端となった先生本人も世間の流行にかなり疎いものの、職場で「ねこねこ村のねこねこちゃんって知ってます?」と聞かれ「これ俺が行ったとこじゃん!てかきっかけしょうかよ!」と、流石に驚いたらしい。(流石に僕と知人関係にあるということは職場の人間には言っていないらしいが。)

そして先生はというと、こちらはドマイナーな村に行くにはスケジュールをどう調整したら良いのかを真剣に考えているところにまた図々しく僕の家に上がり込み、「いやあ、俺やっちゃいましたなあ」なんて言いながら呑気にアイスを食べているのだ。